培養肉の研究開発施設で最先端のバイオリアクターによる細胞培養を行う様子

培養肉市場の商業化が本格化

日本の培養肉市場が2025年に本格的な商業化フェーズに入ることが明らかになった。農林水産省は11月7日、培養肉の安全性評価ガイドラインの最終版を公開し、商業生産への道筋を示した。これを受けて、大手食品メーカー3社が年内に培養肉製品の試験販売を開始すると発表。日本ハムは培養鶏肉を使用したナゲット製品を、伊藤ハムは培養豚肉のソーセージを、それぞれ限定的に市場投入する計画だ。

環境負荷削減への期待

培養肉は、動物の細胞を培養して作られる肉で、従来の畜産と比べて温室効果ガスの排出量を最大96%削減できるとされる。また、土地利用も99%削減可能で、持続可能な食料生産の切り札として期待されている。市場調査会社の富士経済によると、日本の培養肉市場は2025年に約50億円規模でスタートし、2030年には1,500億円に達すると予測されている。

生産コストの大幅削減

業界関係者によると、培養肉の生産コストは過去5年間で約80%低下し、従来の食肉との価格差が縮小している。現在、培養鶏肉は1kgあたり約5,000円で生産可能となり、高級食材としての位置づけから日常食品への移行が視野に入ってきた。政府も「フードテック推進ビジョン2025」の中で培養肉産業を重点支援分野に指定し、研究開発費として今後5年間で500億円の予算を計上している。

消費者の受容性の高まり

消費者の受容性も高まっており、民間調査では20代から40代の約60%が「培養肉を試してみたい」と回答。特に環境意識の高い若年層での関心が高く、サステナブルな食の選択肢として注目を集めている。一方で、味や食感の再現性、長期的な安全性への懸念も残されており、業界では透明性の高い情報発信と継続的な品質改善が求められている。

記事提供
日本経済新聞
著者
経済部記者
公開日
2025-11-07