健康保険適用で市場拡大へ
個人の遺伝子情報や健康データに基づいて最適な食事を提案する「パーソナライズド栄養サービス」市場が急成長している。厚生労働省は11月7日、DNA解析に基づく栄養指導を特定の慢性疾患の予防医療として健康保険の適用対象とする方針を発表した。2026年4月からの適用開始を目指しており、生活習慣病リスクの高い患者が対象となる見込みだ。
統合的データ分析による個別最適化
パーソナライズド栄養サービスは、DNA解析、腸内細菌検査、血液検査などのデータを統合的に分析し、個人に最適化された食事プランを提供する。大手ヘルスケア企業のDeNAライフサイエンスによると、同社のサービス利用者は過去1年間で3倍に増加し、現在約50万人が利用している。ユーザーの約70%が、サービス利用後3ヶ月で血糖値や血圧などの健康指標が改善したと報告している。
AI技術の進歩が市場成長を牽引
市場調査会社のシード・プランニングによると、日本のパーソナライズド栄養市場は2025年に約800億円規模に達し、2030年には3,000億円を超えると予測されている。成長の背景には、健康意識の高まりに加え、AI技術の進歩により分析精度が向上したことがある。最新のシステムでは、約300種類の遺伝子変異と1,000種類以上の腸内細菌を分析し、数万通りの食事パターンから最適なものを提案できる。
管理栄養士との連携と企業導入
サービス提供企業は、管理栄養士との連携も強化している。DNA解析の結果に基づき、専門家が個別にカウンセリングを行い、実生活に即した具体的な食事アドバイスを提供。また、食材の宅配サービスやレストランとの提携により、推奨される食事を簡単に実践できる環境づくりも進んでいる。企業の健康経営の一環として、従業員向けに導入する動きも拡大しており、大手企業約200社が既に導入済みだという。
プライバシー保護への課題
一方で、遺伝子情報の取り扱いに関するプライバシー保護の課題も指摘されている。業界団体では、データセキュリティの強化と透明性の高い運用ガイドラインの策定を進めており、消費者の信頼獲得に向けた取り組みを加速させている。