ニュースの概要
植物由来の食肉代替品で知られるビヨンド・ミートが、カフェインを含む新しい飲料「ビヨンド・イマース」の販売を始めた。同社はこれまでハンバーガー用のパティやソーセージなど、肉の代わりになる商品で成長してきた。しかし近年は、主力の食肉代替品の売り上げが伸び悩んでいる。そこで今回、朝や仕事の合間に飲む「機能性飲料」という別の売り場に踏み出した。タンパク質を手軽にとれる点と、目を覚ます効果を併せ持つ設計である。肉の代用品というこれまでの顔から、日常的に手に取る飲み物のブランドへ。その転換を試す一手として、業界の関心を集めている。
引用元: ビヨンド・ミートがカフェイン入り「ビヨンド・イマース」の販売を開始(セカプリ)
分析・見解
肉の代用品から毎日飲む商品へ向かう理由
ビヨンド・ミートは2019年に株式を公開した当時、植物性ハンバーガーの代表格として注目を浴びた。ところが、その後は売り上げが減り続けている。背景には、価格が牛肉より高いこと、原材料が多く「加工食品」と見られやすいこと、物珍しさで買った人が繰り返し買わなかったことがある。食肉代替品は「週に数回の食事」に使う商品だ。一方で飲料は、毎日の習慣に入り込める。購入の頻度が上がれば、ブランドの売り上げも安定しやすい。今回の発売は、商品の中身よりも「買われる回数」を変えようとする戦略と読める。
カフェインとタンパク質を組み合わせる狙い
カフェインは、世界で最も広く飲まれている覚醒成分である。コーヒーやエナジードリンクの市場は大きく、利用者の習慣も固まっている。そこに植物性タンパク質を足せば、「眠気覚まし」と「栄養補給」を一本で済ませる商品になる。運動後のプロテイン飲料は、これまで運動する人向けに偏っていた。カフェイン入りにすることで、通勤中の会社員や在宅で働く人にも届く。ただし、カフェインの量や飲む時間帯には配慮が要る。子どもや妊娠中の人は控えるべきで、表示や売り場の工夫も欠かせない。
先行する他社の事例が示す厳しさ
植物性飲料の分野には、すでに強い競合がいる。オーツミルクのオートリーは、カフェ店頭への導入で一気に知名度を上げた。しかし、その後は株価が大きく下がり、成長の維持に苦しんだ。プロテイン飲料でも、既存の乳製品大手が植物性の商品を相次いで出している。ビヨンド・ミートの強みは、肉の代替品で培った「植物性タンパク質を、おいしく仕上げる技術」と知名度だ。弱みは、飲料の流通網や販売の経験が浅いことにある。コンビニやスーパーの棚は限られており、定番として残るには初期の試し買いを繰り返し購入につなげる必要がある。
代替タンパク質は用途の広がりで勝負する段階へ
この動きは、代替タンパク質市場が「肉の置き換え」だけでは大きくなりにくいことを示している。肉の味や食感を近づける競争は、すでに技術的な限界に近い。これからは、飲料、軽食、機能性食品など、肉とは無関係の用途で価値を示せるかが問われる。独自の視点を一つ挙げるなら、消費者は「環境のため」という理由では毎日お金を払い続けにくい。眠気が覚める、体が楽になるといった、すぐ実感できる利点が加わって初めて習慣になる。環境価値は理由の後ろ側に置き、実感できる効果を前面に出す設計が、この分野の次の標準になる可能性がある。
ビジネスへの影響
食品メーカーは「売り場」と「使う場面」から商品を考え直す
今回の事例は、主力商品が伸び悩んだとき、同じ技術を別の売り場へ移す選択肢があると示している。食品メーカーは、自社の原料や製造技術が「どの場面で使われるか」を一度書き出してみるとよい。たとえば肉向けの技術を、朝食、間食、運動前後、仕事中といった場面に置き換えて考える。場面が変われば、競合も価格の基準も変わる。その上で、試験的に小ロットで売り、再購入率を測ってから拡大する進め方が現実的である。
小売店と外食店は機能性飲料の棚を見直す機会にする
コンビニやカフェにとって、植物性でカフェイン入りの飲料は新しい提案の材料になる。乳製品を避ける人やプロテインを手軽にとりたい人は、既存の棚では選択肢が少ない。試験的に陳列を増やし、販売数と客層を確認したい。ただし、カフェインの含有量は明確に表示し、高校生や妊婦への注意書きも添える必要がある。
投資や提携を考える企業は習慣化の指標を見る
新規事業への投資や提携を判断する際は、発売直後の話題性ではなく、再購入の割合と定番棚への採用率を見るべきである。話題だけで終わる商品は多い。三か月後の継続率が一つの判断基準になる。自社でも新商品を出すなら、最初から「毎日使われる理由」を一文で説明できるかを確認しておきたい。