培養鶏肉が米国で販売解禁、食卓に届くまでの距離

米国でUpside FoodsとGood Meatの培養鶏肉が初めて販売を認められた。承認の中身、価格やスケールの壁、食品企業や飲食店が今から備えるべき実務のポイントを解説する。

培養鶏肉が米国で販売解禁、食卓に届くまでの距離
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ニュースの概要

米国で、動物の細胞を育てて作る培養鶏肉の販売が初めて認められた。対象はUpside FoodsとGood Meatの2社である。米農務省は両社の製造施設の食品安全体制を承認し、製品のラベル表示も審査した。販売先は当面、一部のレストランに限られる。Upside Foodsはサンフランシスコの三つ星店Bar Crennから最初の注文を受けた。Good Meatは著名シェフのホセ・アンドレス氏の店向けに生産を始めた。研究室の成果だった培養肉が、客に料理として出される段階に入ったことになる。ただし量も価格も、まだ一般の食卓とは遠い。

引用元: 米国、培養鶏肉の販売を初めて承認(The Daily Star)

分析・見解

承認で変わったのは、技術より制度の側にある

培養肉の作り方そのものは、数年前から大きく変わっていない。鶏の細胞を取り出し、栄養液を満たしたタンクで増やし、肉の組織に育てる。今回の節目は技術の進歩というより、国が「売ってよい」と線を引いた点にある。

米国の場合、規制は二段階で進んだ。まず食品医薬品局が細胞を育てる工程の安全性を確認し、続いて農務省が製造施設の管理体制と表示を審査した。この二重の確認を通った事実は、後発企業にとって道筋の見本になる。

三つ星店とスターシェフから始める戦略の意味

両社が最初の販売先に選んだのは、一般の小売店ではなく高級レストランである。理由は単純で、作れる量が少なく、原価が高いからだ。高級店なら、一皿に載る肉の量は少なく、客も新しい食材に対して好意的である。

同じ手法は過去にも例がある。昆虫食や植物由来の肉も、最初は話題性の高い飲食店で紹介され、その後に量販へ広がった。名のあるシェフが調理することで、「実験室の肉」という印象を「新しい食材」へ置き換える効果も期待できる。味の評価が良ければ、それが最も強い広告になる。

価格とスケールの壁は、まだ高いまま

本当の課題は量産にある。培養肉は、細胞を育てる大型タンクと、細胞の栄養になる培養液に費用がかかる。培養液の主要成分である成長因子は高価で、ここが原価を押し上げてきた。

業界では、タンクを大きくして稼働率を上げれば単価が下がると見られている。ただ、製薬用のタンクを転用しても、食品として成り立つ価格まで下がるかは未知数だ。さらに、タンクが大きくなるほど雑菌の混入リスクも増す。一度の汚染で数週間分の生産が止まるため、衛生管理の費用も無視できない。

日本と他国は、承認の前例をどう読むか

シンガポールは2020年に培養鶏肉の販売を世界で初めて認めており、今回の米国はそれに続く動きだ。米国という大市場が動けば、各国の規制当局も審査の基準を整えやすくなる。

日本でも、食品としての位置づけや表示のルールづくりが議論されている。国内企業にとっては、米国の審査資料や表示の考え方が参考材料になる。一方で、和食や惣菜の文化を持つ日本では、肉のかたまりよりも、ひき肉や加工品の形での応用が先に進む可能性がある。

ビジネスへの影響

食品メーカーが今のうちに押さえるべき三つの点

第一に、調達の選択肢として培養肉を見ておくことだ。数年内に大量調達できる段階ではないが、原料としての仕様や価格の情報は集めておく価値がある。第二に、表示の考え方である。米国では「細胞培養」と分かる表示が求められる。日本で同様の基準が決まる前に、自社の説明方法を検討しておくと動きが早い。第三に、提携の機会だ。培養液や足場材料などの周辺技術は、食品メーカーの発酵や素材の知見が活きやすい。

外食と小売は小さな試験導入から始められる

外食企業なら、限定メニューとして話題性を狙う使い方が現実的だ。客の反応や追加説明の必要量を、少ない投資で確かめられる。小売では、急いで棚を作るより、消費者調査で受け入れやすさを測る段階が適切である。年代別に抵抗感の差が大きいため、価格より先に「安全性への説明」を整えるべきだ。

判断の物差しは、承認件数ではなく原価の推移

意思決定者が追うべき指標は、承認の数よりも、1キログラム当たりの製造原価の下がり方である。この数字が既存の鶏肉の数倍以内に入った時点が、本格参入を検討する目安になる。それまでは、情報収集と小規模な実験にとどめ、投資は段階的に増やす方針が堅実だ。

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